齢20を過ぎて初めて日常的に本を読むようになった読書の初心者の、気ままな読書履歴です。ミステリ中心。
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2008.11.25 Tue
儚い羊たちの祝宴
もうね、びっくりするぐらい更新できてないですね。
11月の頭に今月の更新目標を示したものの、全然実現できていないですし。
まぁこうして更新できていなかったのには理由があるんですが、それについては後々触れることにして、とっとと本の感想に移っていくとします。
今回感想を書くのはこちら。


儚い羊たちの祝宴儚い羊たちの祝宴
米澤 穂信

新潮社 2008-11
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おすすめ平均

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11/21に出た米澤氏の新刊です。
私は基本的にハードカバーの本にはめったに手を出さないのですが、好きな作家の新刊となれば別です。
文庫になるのなんて待っていられないですし、そう頻繁に新刊が出るわけじゃないからあまり財布も傷まないですからね。
そんなわけで久しぶりにありついた米澤氏の新刊だったわけですが(もっとも米澤氏の作品にはまったのがここ最近のことなんで言うほど待ってはいないんですけど)、期待に違わず面白かったです
いや、こう書いたら語弊があるかな。
収録作のうち何本かは読んだことがあってそれに基づく期待値だったので期待には違わない、でも不満がないかというとそうでもない
ーそんな感じ。

収録作は順番に、奇怪な連続殺人事件の真相に驚愕させられる「身内に不幸がありまして」、屋敷に幽閉された男と妾の子としてその屋敷にやってきた女との心の交流を描…ゲフンゲフンな「北の館の罪人」、雪深い別荘の管理人の異様さが徐々に浮き彫りになっていく「山荘秘聞」、孤独な女と使用人との心の交流を描…描いた「玉野五十鈴の誉れ」、全編に共通して出てきたバベルの会なる集まりの内幕に踏み込み一つの物語として締めた「儚い羊たちの晩餐」の全五編です。
このうち書き下ろしは最後の「儚い羊たちの晩餐」のみで、それ以外は小説新潮などに掲載されていたもの。
私自身はそのうち「本格ミステリ08 二〇〇八年本格短編ベスト・セレクション」に収録されていた「身内に不幸がありまして」と「Story Seller」に収録されていた「玉野五十鈴の誉れ」の二編については読んだことがありました。
その二編を読んで感じていた癖になるじめじめ感というか、旧家の持つ魔力に当てられてちょっぴりおかしくなってしまった人々の織りなす暗黒な物語が個人的に大いに気に入っていたので、他の収録作にもそんな暗黒さを期待していて本作を読んだんですよね。
そしてその点に関しては期待通りだったんです。
ボトルネックとはまた違ったダウナーな雰囲気が堪能できて個人的には大満足です。
ただ…ただですよ。
帯や米澤氏のホームページで殊更「本作は最後の一撃(フィニッシングストローク)に拘った」と強調されちゃうと、どうしても求める水準が高くなってしまうんですよ。
具体的な作品名を挙げちゃうと下手したらネタばれになってしまうかもしれないんで控えますが(これまで書いてきた感想では普通に作品名を挙げちゃってたりするような気がするけど気にしない)、最後の最後で信じていた世界がいとも脆く崩れ去ってしまうような、自分が予想もしていなかった真相が最後の最後に明らかにされるような、そんな感覚を与えてくれるような作品がミステリの中でも特に好きなだけに、本作にもそんな「喪失感」を味あわせてくれることを求めてしまうんですよね。
で、じゃあ実際どうなんだ、喪失感を味あわせてくれるのかっていったらーどうにも釈然としないんですよね。
確かに最後の最後でドキッとさせられることはあるんです。
でもそれは予想の範疇と言ったらアレですけど、フィニッシングストロークによって世界の見え方が百八十度変わるんではないんですよね。
ラスト数ページで既に明らかになっている真相を綺麗に締めるための、言わば「決め台詞としてのフィニッシングストローク」なんですよ。
それがどうにも求めていたものとは違うんで、もやもやした気持ちになっちゃうんですよね。
まぁそれは本作を手に取る前に収録作を二編読んで予想できたことで、フィニッシングストロークにはあまり期待はしていなくかったから期待には違わないんです、でも、やっぱり不満なんだよなぁ。
殊更にフィニッシングストロークがどうだと煽ってなければこんな不満を抱くこともなかったんですけどね。
フィニッシングストロークのことは伏せておいて、ダウナーな雰囲気を楽しんでいる読者に催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえもっとダウナーなものの片鱗を味わせる、そんな奇妙なアクセント程度の位置付けぐらいがちょうど良いんじゃないかと。

ま、なんだかんだで多少不満は感じるものの十分楽しんで読めたのは確かです。
一番楽しめたのが既に読んだことのあった「身内に不幸がありまして」だったっていうのはちょっと残念な気もしますけども。
まぁそれは「身内に不幸がありまして」の出来が良すぎるからなんですけどね。
フィニッシングストロークによって明らかにされるホワイダニットが堪りません。

ともかくダウナーな雰囲気を味わいたい、ボトルネックで知ってしまった得体のしれない面白さを求めて日々さまよっているーそんな儚い羊たちのために用意されたこの祝宴、参加しない手はありませんよ。



ーなんて感想を、あの子が元気だったら書くんでしょうね。
管理人の母




えと、一応念のために言っておきますけど、私は超元気です。ピンピンしています。
ちょっとフィニッシングストロークってのをやってみたかっただけです。
更新が滞っていたのも不慮の事故にあったとかじゃなくて純粋にサボっていたからです。ホントそれは申し訳ない。
今後更新は頑張ります。絶対、多分、あわよくば…

テーマ:推理小説・ミステリー - ジャンル:本・雑誌
yanbal1915 at 23:55    米澤穂信    Comment(4)   TrackBack(4)   Top↑

Comment
Posted by boqi
楽しく読ませていただいております。
フィニッシングストロークどきりとしました。この本のそれは、「管理人の母」のようなものというより
パズルの最後の1ピースが綺麗に嵌る、といった感じ?でしたね。
といっても雑誌掲載の4編しか読んでいないのですが。
「身内~」は確かに面白かったです。書下ろしの出来はいかがでしたか?
2008.11.26 Wed 03:50 URL [ Edit ]
Posted by yanbal1915
>boqi さん
はじめまして、コメントありがとうございます。
フィニッシングストロークでどきりとして頂けたのならそのために更新を休んでいた甲斐があるというものですーというのは良くない冗談で、なるべく更新を頑張るようにしますんでまたちょくちょく遊びに来てやって下さい。

書き下ろしの方は最初から最後まで一人の独白によって物語が展開されるんではなくてバベルの会の元会員の日記を第三者が読むという形式で展開されるんで、他の4編とはちょっと毛色が違います。
とはいえ展開されるのは同じく暗黒な物語なんですけども。
個人的には要所要所で日記を読んでいる側の視点に引き戻されるのが没入間を削がれる感じがして微妙でした。後半の展開も予想通りで、パズルの最後の1ピースが綺麗に嵌るといった感じもあんまりなかったです。
ただ、連作短編集の締めとしての役割は十分に果たしていると思います。
これ単体で読むのは正直微妙だけど連作短編集の締めとして読むなら全然問題ないって感じですかね。
「祝宴」ではなく「晩餐」と、表題作になっていないところからもその位置付けが分かるんじゃないでしょうか。
だから書き下ろしだけを目当てに買うとなると…う~ん、文庫落ちを待っても良いような気がします。
2008.11.26 Wed 22:32 URL [ Edit ]
Posted by 藍色
こんばんは。
トラックバックさせていただきました。

うわーフィニッシングストローク、ビックリしました。
確かに、一行って言うより決め台詞の作品集でしたね。
2008.12.09 Tue 04:55 URL [ Edit ]
Posted by yanbal1915
>藍色さん
こんばんは。コメント&トラックバックありがとうございます。
伏線のほとんどない反則的なフィニッシングストロークですが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。

「フィニッシングストローク」とう単語に過度に期待しなければ非常に楽しめる作品でしたね。
暗黒な物語世界を更に深みのあるものにしてくれる決め台詞はすごく魅力的でした。
2008.12.10 Wed 21:27 URL [ Edit ]

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儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
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粋な提案 2008.12.09 Tue 04:42
読書メモ『儚い羊たちの祝宴』
米澤穂信の短編集『儚い羊たちの祝宴』を読みました。けっこう面白かったです。『身内に不幸がありまして』『北の館の罪人』『山荘秘聞』『玉野五十鈴の誉れ』『儚い羊たちの晩餐』を収録。 同じ作者の著書、『春期限定いちごタルト事件』は、う~んまぁ面白いかなぁ・...
自由の森学園図書館の本棚 2008.12.22 Mon 00:54
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